Little AngelPretty devil
           〜ルイヒル年の差パラレル

      “春先シークレット”
 


大寒という節季に律義に合わせてのこと、
随分な級の極寒が列島を襲ったのが、
ほんの10日とちょっと前の話で。
一年の内の一番寒いころという名に恥じない底冷えに、
日本海側のみならず、
太平洋側の平野部でも雪がちらつき、
雪深い土地では尚の積雪に車があちこちで進まなくなったり、
凍結した路面での事故が多発。
また、空気が乾燥しているところへ
終日使い続けた暖房器具の発熱や、
コンセント部の埃への引火などから火災も続発。

 「寒いってだけで、そんなにもコトが起きるんだから、
  年末年始だからってだけじゃあない厄落としも、
  そりゃあ要りようになるわなぁ。」

スポーツ選手愛用の、
ドラムバッグと呼ばれている超大きなスポーツバッグを
肩から斜め掛けにして小さな背中へ負うようにしていた坊や。
信号待ちをいい機会に、
ちょっと休憩とばかり足元へ降ろし、う〜んっと背伸び。
冬空に揺れる金の髪もかわいらしいし、
色白でちょっぴりツンとした感のある面差しも、
まだまだ幼くてキュートな作りなのが愛らしく。
ライトダウンのジャケットを羽織った細い肩や薄い胸元も、
フリースのパンツを履いたすんなりした脚も、
バックスキンのハーフブーツに包まれた細っこい足首も可憐という、
ちょっと見、子役かモデルかと思い込まれるほどの
あか抜けた整いようをした坊やだが、

 “そんな包装紙だってのに、
  中身は 縁起をかつぐ話を持ち出すほど
  立派なジジむささだってのが何だかな。”

自分だとて、勝負ごとに関わる以上はという方向から、
厄払いとか厄除けとかには気を遣うほうだが、
その起源だ何だまでは考えたことがない葉柱にすれば。
自分より幼い坊やが
そこまでの造詣の深さで物事考えていたというのは、
今更な話ながら、
ちょっとしたインパクト、のようなものがあったらしい。

 「…で、この中身はもしかするとアレか。」

今日は日曜で学校はお休み。
朝早くから賊学のグラウンドでトレーニングに参加していたものが、
昼を前に買い出しに出掛け、
その出先から“迎えに来い”コールをして来た鬼軍曹殿。
昼食の弁当や飲み物は、
それこそ食べ盛りが結構な人数いるのでホカ弁を発注しているし。
スポーツドリンクなどは、まとめ買いしているものの配達待ち。
今日の練習で使うもののうちで足りなさそうだった、
アイシング用のスプレーや氷、
リクエストがあった、植田インやのど飴、目覚ましガムなどを見繕い、
新製品のドリンク各種を品定め。
それからそれから…この時期といやぁの、

 「福豆お徳用3キロは、ウチで炒って来るから持ち帰りな。」

やっぱりなぁ。(笑)
こちらの坊っちゃんと賊学アメフトボウラーたちとの節分行事といや、
マシンガンによる福豆の一斉射撃というのがもはや風物詩。
ゴーグル装備の坊やが抱えたエアガン式のマシンガンによる豆まきは、
厄除けと呼ぶのは甘いほどの威力で部員たちへ降りそそぎ。
ランニングへの追撃だったり、
シャトルランへの勝ち水代わりだったり、
それはにぎやかな一幕が毎年のように繰り広げられており。
今年の“節分”は明日の月曜。
受験生が入試を受けに来るのとの兼ね合いもあってのこと、
後期試験も早々に終わっている 大学生の皆さんと違い。
妖一くんはまだガッコがある身だが、月曜は午前で終わりだそうで。

 「何だよ、クラブハウスでもそんくらいは出来るぞ。」

その大荷物をまた持って来んのは骨だろうと、
気を遣って下さるお気持ちは有り難かったが、

 「それで去年預けたら、
  二回生の誰かさんたちが、
  半分以上を屋上の倉庫にしまい込んでくれたんだよな。」

 「え? そうだったんか?」

去年といやぁと、葉柱さんが思い出すのに並行して、
もーりんも振り返ってみたらば、
確か総長さんは“恵方巻き”の下準備に着手していたので、
豆まきのほうへは不参加だったんですな。

 「首謀者には
  新品だったマシンガンで集中砲火の刑にしてやったから、
  まさかに同じ馬鹿はやんねぇだろけど。」

それでも
攻撃態勢に一時中断という間の抜けたことを挟んでしまったため、
そんなロスがあってはならぬとの
警戒が抜けない坊やだったりするようで。

 「あ、それと。
  ルイ、明日はあのマフラーして来いな。」
 「マフラー? ああ、あれな。」

信号が変わり、
さあ駐車場のある向こうへ渡るべぇと歩き出す二人を
少し離れたところから見やっておいでの人影が2つほど。
ホカ弁屋まで昼食を取りに出ていた賊学生であるらしく、

 「あのマフラーって、何のことだろ。」
 「あれじゃね?
  先月のルイさんの誕生日に坊主が編んだとかいう。」

手先の器用な妖一くんは、
小学生でありながら、
大柄なルイさんへのセーターまで編んだことがある強わもので。

 「でも確か、マフラーって
  去年まで使ってたのも坊主の手編みじゃなかったか?」

 「そうそう。渋い緑で、近くで見たらば、
  縄編みとかいう凝った編み方されてたとかって女子がサ。」

ご当人たちは内緒にしていたらしく、
それでそのお披露目さえまだだったらしく。
……だってのに、ここまで実は知られているのが、
現代の情報社会の実情の恐ろしさよ。(おいおい)
いや、ただ単に
関心のある人が多い話題だったからでもありましょうが。
かの如く、
平和なんだか物騒なんだかも微妙絶妙な、
困ったお人たちの困った年中行事が今年もやって来るらしいです。





   〜Fine〜  14.02.02.


  *インフルでノックダウンさせられたもーりんの厄も、
   ついでに祓ってほしいとこです。
   子ヒル魔くん、よろしくね?(おいおい)


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